セヌリエは1887年、化学者であるギュスタブ・セヌリエによって創立されました
ルーブル美術館向かいのセーヌ川左岸に小売店「マガジン・セヌリエ」を構え、小売店裏で絵具を製造し販売していました。
現在は事業拡大の為、製造工場をサンブリューに移し、小売店のみセーヌ川沿いに残し、未だ多くの美大生や画家が通っています。店舗の直ぐ裏手には沢山の画廊や美術大学、エコール・デ・ボザールがあり、街全体がアートで賑わっている地域です。
店員は創業当時と変わらないスタイルで白衣をまとい、薬局で薬を処方する薬剤師の様にお客様の要望を伺い顔料や絵具を提供しています。
当時はピカソやセザンヌ、ピサロ、ボナードなど数多くの著名な画家が通い、セヌリエの絵具を愛用していました。
創業当時の店舗 | 当時の店内 | 店舗での絵具の製造 |
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手作りで絵具を製造 | セヌリエの店舗 | セヌリエの店舗内 |
セヌリエの店舗内 | オイルパステルの什器 |
Oil Pastel
ピカソの為に作られたオイルパステル
1949年、パリの画家だったヘンリー・ゴエッツは、有名な画材メーカーのヘンリー・セヌリエに彼の友人であるパブロ・ピカソのために油性棒状絵具の製造を依頼しました。ピカソは、セーヌ川を挟んでルーブル美術館の対岸にあるセヌリエの店に永い問、頻繁に訪れ、「色褪せ」や「ひび割れ」もなく、どんな表面にも自由に使える素材を探しておりました。彼らの共同研究が比類のないオイルバステルを生み出しました。初め48色でしたが、5色のメタリック色を含め1975年に約2倍になりました。その後、5色のパール色と普通色が増色され、現在、セヌリエオイルパステルは、すべての画家の需要に応えられる全120色です。
他のセヌリエの画材のように、オイルバステルは多くの画材の中で重要な画材の一つになりました。セヌリエは最高級の原料だけを使っているので作家に限りなく高品質の画材を提供しています。セヌリエオイルパステルは次の点で有名です。
●最高級の顔料
●中性の結合剤
●高級な中性ミネラルワックス
●高濃度顔料
●自由な表現ができる極度なクリーミーな肌理(きめ)
●優れた耐光性
●稀に見る濃さと鮮明さ
これらの顕著な特徴は、セヌリエオイルパステルを世界的に材質面での標準品としてその地位を確立しました。
セヌリエオイルパステルは2つのカラーグループに分けられます。
1) 不透明、半透明、透明色から成る標準的な110色でクラシックな色相と新しい色合いや色調も含まれています。すべての色は、どの色とも互いに混色できます。
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2) 他のグループは5色のパール色、5色のメタリック色です。パール色及びメタリック色は、優れた耐光性があり、混色が出来,独特な光の反射を得られます。
普通色とパール色のオイルバステルは、特別に考案された乾燥しない結合剤と混ぜられ厳選された有機及び無機顔料で造られ、最高級のwax(ワックス)と化合されています。極めてクリーム状の肌理(きめ)を持つセヌリエオイルパステルは、前述の3つの要素からできています。ソフトパステルの様な感触ですが、油絵具の様に見えます。ソフトパステルほどもろくなく、重厚な表現の効果も出来、また画溶液を使い重ね塗りやぼかし技法も可能です。
セヌリエオイルパステルは、ヒビ割れがなく、多様な基底材に使えますし、独自の効果を得るため他の描画材料との併用もできます。高級顔料を使用しているため、優れた隠蔽力、濃さがあります。
セヌリエオイルパステルは、酸化性物質を含んでおりません。これは、黄化、ヒビ割れがなくて顔料の色の強さを保護し、また直面の劣化を予防します。酸化性物質を含まないため、オイルバステルは乾く事がありません。しかし、セヌリエのフィキサチーフで固着できます。ミシン目の入ったラベルですので、減るにしたがってパステルのラベルを剥がし易くなっています。
オイルパステル
使用可能な様々な支持体
オイルパステル製造風景
オイルパステルのパール色
オイルパステルの技法
50年以上前からオイルバステルを使ったいろいろな技法が開発されました。最も知られているいくつかの技法を紹介いたします。
1)オイルパステルだけで絵は描けます。厚くも薄くも描けますし、にじませたり、輪郭をはっきりさせる事もできます。完成した画面は基底材にも、筆圧にも、表現の仕方にもより異なってきます。
2)オイルバステルは、テレピンやペインティングオイル、その他の画用液と併用して重ね塗りや薄塗り、またはぼかし効果も得られます。オイルバステルをぼかした上に油絵具を使えますが、下層には下塗りが不可欠です。画面をいろいろな道具を使って削ったり、引っ掻いたり、塗りつけたり、ブラシでこすったりして興味深い効果が出せます。オイルバステルは、完全に乾いた油絵具の上には使えますが、その層にリタッチングバニス(加筆用バニス)を施してください。そうすると画面に粘着します。逆に油絵具は、オイルバステルの上には使わないでください。それは、オイルバステルは決して乾きませんので、油絵具が固着しません。
3)オイルパステルは、水彩絵具やアクリル絵具とも使えます。それらの水溶性絵具は、パステルと溶け合いませんので、はじく効果があります。また色鉛筆やオイルスティック(棒状油絵具)と併用できます。
4)オイルバステルは、パレットナイフで盛り上げ画法も可能です。やり易い方法は、加熱(ナイフを温めて)して、溶かすとよりスムーズでクリーミーになり流体にもなります。また、温めて固まる前に顔料、砂、おがくず、木片、紙、ガラス、金属等を付着させたり、ちりばめたりする事(コラージュ)が可能です。
5)オイルバステルは、221(トランスペアレントメシ'ユーム)を先に画面に塗ると、後から重ね塗りした色が半透明になり、面白い効果が得られます。
オイルバステルは、印刷インクと共にモノタイプ印刷にも使えます。ほこりや汚れから作品を守るため、作品完成して7~10日後にフィキサチーフ(定着液)を使う事をお勧めします。このフィキサチーフは作品を乾燥させるものではありませんが、画面を永い間、密封し逆に将来、修復が可能になります。
オイルパステルの支持体
セヌリエオイルパステルは技法上の抑制やキャンバスという伝統的な支持体からの拘束から逃れ、自由な画家のために創造されました。それは非常に多様性に富み、次のようないろいろな支持体に使われます。
●紙 : 170~200gの中性紙をお勧めします。240~280gの水彩紙も適しています。
●イラストボート等中性紙の厚紙、段ボール紙、チップボード、コルク
●木、ベニヤ板、マゾナイト、陶器、石膏、金属、プラスチック、ガラス、フィルム
●キャンバス(綿、麻、又はポリエステル)、その他天然、人工繊維
特に要求されてはいませんが、強度を維持するため紙以外の支持体の場合、描く前にジェッソを地塗りする事をお勧めいたします。